板橋文夫の新作は、ここのところの活動の中心になっている大所帯バンドを中心としたもの。
前々作 "みるくゆ"(https://blogs.yahoo.co.jp/pabljxan/63880619.html) では、類家, 纐纈, レオナと
3人だったのが、前作 "Alligator Dance 2016"(https://blogs.yahoo.co.jp/pabljxan/63979738.html)では
さらに 、後藤, 高岡が加わり5人になり、本作では、林, 片山, 吉田, 山田, 太田, 外山が加わり11人にと
拡大している。
本作での拡大は2009年の "We 11"(https://blogs.yahoo.co.jp/pabljxan/58441623.html) の面々を加えたようなメンツと言えそう。
この盤も流通にはほぼ乗っておらず、リリースされた情報は知っていたが、12月のライブ "板橋文夫, 瀬尾高志, 本田珠也"(https://blogs.yahoo.co.jp/pabljxan/64671847.html)のときに入手できるだろうと悠長に待っていたました。
が、この盤の核になるメンバーで九州でリリースツアーをしているときに片山の訃報が入ってきて、はたと気づいて、これが遺作か?と思ったらすぐに入手したくなり、ネットであれこれ探していたら新宿のユニオンに在庫がある情報を見つけて、仕事帰りに探しに行ったのであります。
ところが、いくら探しても見つからず..。店員さんにも探してもらったら、とんでもないところに挿さっていたのを見つけてもらえて無事入手できた。
でも、紹介はこんなに遅くなってしまいました (^^;;

メンツは前述の通りの大所帯。ただし、すべての曲にすべてのメンバーが入っているわけではない。
少ないところを抜粋すると、3曲めが片山とのデュオ、5曲めが吉田, 瀬尾のトリオ, 7曲めが纐纈, 瀬尾, 外山のカルテット、
8曲めが瀬尾, 竹村とトリオ、9曲めが林とのデュオ、13曲めが太田, 外山とトリオ、と言った感じ。
板橋文夫(P)、
林栄一(As)、纐纈雅代(As)、片山広明(Ts)、吉田隆一(Bs)、
類家心平(Tp)、山田丈造(Tp)、
後藤篤(Tb)、高岡大祐(Tuba)、太田惠資(Vn)、
瀬尾高志(B)、竹村一哲(Ds)、外山明(Ds)、レオナ(Tap)

演奏曲は、板橋7曲、レオナ、吉田、纐纈が各1曲、Roland Kirk、Barry White、Don Gibsonで全部で13曲。

01Dancin' Madam 2018
02産褥マタニティブルーズ
03Lady's Blues
04Dream in Dream
05手からこぼれるように
06DOKOMADEMO
07冬のワルツ
08PAKA!
09Mary Hartman, Mary Hartman
10Lonely Lonely
11FUMIO69・ROCK
12I Can't Stop loving you
13七夕


片山のブローが冒頭を飾り、陽性の軽やかな演奏をあに突入して行く1曲め
2曲めが、片山の馬のいななきのような咆哮からレオナのタップをフィーチャーした大作
3曲めは、片山と板橋のデュオで聴かせる情念の1曲

以降、
哀愁感のある曲、美旋律を聴かせる曲、フリーな気配を湛えた曲、乗りと勢いで聴かせる曲、心地良いアンサンブルを聴かせる曲、10分前後の大作では、そんな演奏が場面毎に現れると、幅広い板橋ワールドをこれでもかと繰り出してくる。

そんな中でも、このバンドの真骨頂は、全員(、特に管楽器に)クセの強い面々が揃っているところで、
そんな輩が一斉にドビャーっとやったら、そのカオス感、パワー感は、尋常ならざるもので、その圧倒的にパワフルな演奏にこそ聴きどころがあると信じているが…

そんな場面が1曲めとか6曲めとかで聴かれるが、それが11曲めでピークを迎え、"ロック、文夫"の掛け声からのノリノリのロックテイスト満載の演奏がカオティックに温度感高く鳴り響き、中間部では、片山のソロも涙ちょちょぎれながら堪能できる。

板橋のもう一つの大いなる魅力である、美旋律、哀愁のバラード曲が半分くらい入ってくるが、これはその後の怒涛の演奏を堪能するための露払いと言ってしまいたいくらい、大所帯の圧倒的サウンドをこの盤では堪能したいところ。。

聴いていて前面に出るのが片山のテナーの頻度が高いことと、前述の通り片山の遺作であることから、聴くべきは3曲めとか9曲めのデュオであるのは間違いないが、心を鬼にしてアルバムの中のベストは11曲めを指定させてもらいます。


"Fumio 69" 板橋文夫(https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1007766366)