須川のリーダー作を紹介するのはこれが2作め。前作は
 "Outgrowing" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a64688221.html )
トリオとしては、Ictus Trioの下記が直近の作品だが
 "ICTUS" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a64398605.html )
古くは、桑原あいの作品があり、これが個人的には、初須川ということになる、
 "Love Thema" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a63152665.html )

須川のサウンドはライブでも多く聴いているが、本作はライブでも聴いたことがない、林正樹をピアニストに迎えた作品。
林のアルバムも実は多く聴いていまして、ざっと並べて以下のような感じ。
 "Double Torus" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a61724220.html )
 "El retratador" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a62617345.html )
 "Pendulum" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a63495170.html )
 "Lull" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a64417037.html )

ここに石若駿を迎えた、かなり強力な布陣でのトリオです。
須川崇志(B)、林正樹(P)、石若駿(Ds)

演奏曲は、須川3曲、石若3曲、林1曲のオリジナルに、スタンダードを入れた全部で8曲。
1.Time Remembered
2.Yoko no Waltz
3.Nigella
4.Banksia
5.Under the Spell
6.Lamento
7.Largo Luciano
8.Yoshi

全体的な印象としては、クールだったりシリアスな雰囲気が前面に出ている、東鉄な美しさを持った作品というのが第一印象で、温度感は総じて低めという印象を持つということにはなる。
が、林のピアノが奏でる旋律にそこはかとなくほの温かいものを感じるのも事実で、個人的感覚としては、このピアノの醸す温度感で、そう冷ややかなものではなくじんわりと温かなものを感じるようなアルバムと受け取っている。

個々人の演奏も、名手揃いなので満足度の高い演奏であるのは当然として。
須川のピチカートでの音の強さ、表現の盤石さは言うに及ばず。
ボウイングでの圧倒的な表現力に脱帽。
特に 6曲めで冒頭からのがっつりと披露している渾身のボウイングが圧巻。
ここでの石若は、石若の繊細さがよく出ているドラミングで、
これまでの演奏の中でも際立って(肯定的な意味で)温度感の低いドラムを叩いているのではないかと感じられる。
細心の集中力で音を出しているような気配すら感じるような、そんなドラムを聴けるのは、ちょっと珍しいように思う。

美しさとほの温かさとが醸し出す、程よい緊張感が心地良い、素晴らしい作品に仕上がっている。
今年の年間ベストの有力候補です、これは。

ベストは3曲めにしましょう。
"Time Remembered" 須川崇志 Banksia Trio (https://www.amazon.co.jp/dp/B082JRMNX1/ )