日本のジャズを聴け     (和ジャズBlog)

最近の日本のジャズは、もの凄く面白い!! もっともっともっと聴いて欲しいので、たくさん紹介します。

"Gentle November" 武田和命

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武田和命の名前は、日本のジャズ史のような本などを読んでいて、いろんなところで名前を見るのでよく覚えている。
これまでの演奏は、第4期山下トリオでの演奏を聴いている。
 イン・ヨーロッパ-1983- (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a63142544.html )
渋谷毅オーケストラの最初のアルバムも未紹介だが聴いている。
 "LIVE 1989" (https://www.amazon.co.jp/dp/B07V3V1F91/ )
武田は1939年生まれで、64年頃から演奏を始めていたようだが、70年代初めにいったん引退状態に陥っていたそう。
伝説にして幻のテナーマンと言われるのは、この頃の音源がほとんど残っていないかららしい。
78年に再発見され、本作をもって再デビューということになり、その後の晩年にかけての音源は前述のとおり記録が残っている。
そして、89年に食道がんで他界する。
本作は1991年に新星堂のジャズレーベルである、オーマガトキジャズ (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a61788462.html )にて、現NoTrunksの村上店長が発掘再発してえらく売れたそうだ。

メンツは、泣く子も黙るといった面々が並んでいる。
が実は、国仲さんのベースが入ったアルバムって聴いてなかったりします(恥)
武田和命(Ts)、山下洋輔(P)、国仲勝男(B)、森山威男(Ds)

演奏曲は、レコードのA面にあたる4曲がJohn Coltraneゆかり4曲、B面4曲が武田和命のオリジナル
1.Soul Trane
2.Thema For Earney
3.Aisha
4.It's Easy To Remember
5.Once I Talked
6.Our Days
7.Little Dream
8.Gentle November

冒頭から、文句なしに極上のバラードが聴こえてくる。
武田の程よく音を揺らしたサックスがこの上なく心地良い。
ピアノが山下洋輔だが、ここではフリー要素皆無の、優しくも美しいバッキングです武田のサックスの後ろ盾を担う。
ドラムの森山も同様にらしくない抑制の良く効いた演奏で武田のサックスのバックアップに徹する。
そう、山下も森山も我を殺して、完全に武田の演奏をサポートする側に徹した演奏をひたすらに繰り広げられる。
もちろん国仲もだが、自分が過去にほとんど聴いていないので、偉そうなことが言えない。
このアルバムのことを調査するのにいろいろ検索していたら、「武田のソロアルバムだ」と書いてあったり、「コルトレーンのバラッドの和製版」だと書いてあったりしたが、いずれも言い得て妙と大いに納得。
前述の通り、有名曲とオリジナルが混在するが、いずれもしっとりとした良い曲で通しで聴いていても全然違和感はない。

ベストは、7曲めにしましょう。

"Gentle November" 武田和命 (https://www.amazon.co.jp/dp/B09V2BTC6L/ )

"Sonicwonderland" 上原ひろみ

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上原ひろみの新作はトランペットの入ったワンホーンカルテットです。
近作を調べてみると、前作が、弦楽四重奏入りの作品
 "Silver Lining Suite" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/484468527.html )
さらにその前がハープとのデュオ
 "Live In Montreal" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a64291666.html )
どうも上原というとピアノトリオという印象が強いので、あらためて近作がピアノトリオじゃなかったんだ、しかもトリオの前作は2016年と7年も前だったことに、ちょっと驚きを覚えるくらい。

メンツは以下のとおり。
Hadrien Feraudはchick coreaの"Vigil"(https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a62118193.html )とかいくつかのアルバムで聴いている人。
Adam O'Farrillは、自blogを漁ると、Mary Halvorsonのアルバムが出てきました。
 "Amaryllis" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/490644617.html )
ドラムのGene Coyeは初聴きのようです。
上原ひろみ(P,Key)、Hadrien Feraud(B)、Gene Coye(Ds)、Adam O'Farrill(Tp)

演奏曲は、すべて上原のオリジナル。
01. Wanted,
02. Sonicwonderland
03. Polaris
04. Go Go
05. Up
06. Reminiscence
07. Trial and error
08. Utopia
09. Bonus stage
10. Reminiscence

アップテンポの曲も、スローな曲もタイトなドラムが主導するタイトなサウンドという印象。
前述のとおり、これまで上原の管楽器の入ったアルバムはかなったと記憶しているが、本作ではAdam O'Farrillのトランペットが全面的にフィーチャー、前面の大半を担っていることで、上原のアルバムとしては印象がかなり変わってきている。
このトランペットによる朗々としたサウンドが多くの場面でサウンドの印象。当然だがこれが支配的。
上原はソロはもちろんしっかりがっつり聴かせるが、バッキングに徹している場面も相応にあって、これまでのトリオ作とは大きく立ち位置も印象も変わってきている。
もっともBlue Giantはサックス入りだったが、あれは役としての演奏なので本来とは違うはず。
とはいえ 2曲め前半の電子音でのソロはとか、5曲めのアップテンポの曲でのアコピでのソロとか、かなり攻めた演奏を聴かせる場面もある。
ドラムがタイト、ベースがテクニカル系、トランペットがエモーショナルな演奏でバランスが取れているような感じで、上原のピアノは、ちょうどその中間でちょっとタイト寄りと言った立ち位置になっている感じか。
冒頭からタイト、タイトと書きまくっているが、これまでの上原のアルバムの中では相当エモーショナルな演奏であるのは事実。
後半はよりメロディアスな曲が増えてきて、味わいのある良い演奏が充分素晴らしいが、上原らしく弾き倒すような演奏の頻度はグッと落ちてくる。
その最たるものが、6曲めのボーカル入りのトラックで、このメローなサウンドは上原のアルバムであることを考えると相当異色。
さらに9曲めは 2ビートのラグタイム風と、上原らしからぬサウンドが並ぶのはアルバムとしても異色作と言ってしまって良いのでしょう。

ベストは4曲めにします。

"Sonicwonderland" 上原ひろみ (https://www.amazon.co.jp/dp/B0CB9T7H13/ )

"Landed On The Moon" 渡辺翔太

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渡辺翔太のリーダー作を聴くのは、これが3枚め。前作までの紹介は以下の通り。
 "Awareness" (http://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a64531360.html )
 "Folky Talkie" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/473385963.html )
 "Just A Tiny Music Sauce" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/486277824.html )
他にも参加作はいくつか聴いていて、実はけっこうな頻度で聴いていることになる。

本作は"Folky Talkie"以来のレギュラートリオ作で、さらに前作同様ボーカルの数曲で入る。
ただし、そのボーカリストは、吉田沙良からRuri Matsumuraに変わってます。
Ruri Matsumuraをちょっと調べたら、最近話題になってきているSSWのようです。
渡辺翔太(P)、若井俊也(B)、石若 駿(Ds)
Ruri Matsumura(Vo:2,8)

演奏曲は、渡辺のオリジナルが9曲に、charlie Chaplinでぜんぶで10曲。
1. Mancha-
2. Friends
3. Unbirthday
4. That's the Way Life Goes
5. Lullaby
6. SMILE
7. Daydream
8. Her Marmalade
9. Table Factory
10. Correndo o verao

レギュラートリオのアルバムではあるが、本作でもこれまで同様にボーカル曲が入る。
しかも 2曲めなんて前半に入れて、アルバムごとに曲順が前に来ているのは、ボーカルを入れる意味合いが増しているが故なんでしょう。
そのボーカルが吉田から松村に変わっているが、もう少し可愛らしい声音と聴いたが意図はなんだったか。
とはいえ、主体はピアノトリオによる演奏にあると思っている。
リーダーの渡辺のピアノはアコピを主体に、曲によってエレピを使い、低音から高音までシームレスに両手の役割をしなやかに入れ替えながら美しくもノリの良いサウンドを奏でる。
こなおおらかに歌うようなスタイルは、渡辺の真骨頂といっても過言ではないくらい。
石若も、最近の演奏の中ではグルーヴ感のある演奏を披露していると感じたが、曲調が個人的に気に入ってる石若のサウンドに合致しているということかもしれない。
ボーカルのバッグでの演奏は、最近増えてきているJ-POP関連の仕事から、よりツボを抑えた演奏になってきているんじゃないかと推測。
ボーカル曲では、そんな石若共々、ピアノ、ベースを含めて良い具合に攻めた演奏をしていて、歌唱を無視して聴いていても楽しめるようなクオリティ。

前述の通り、 2曲め、8曲めがボーカル入りで、5曲めがピアノだけで奏でられる。

ベストは6曲めにします。
"Landed On The Moon" 渡辺翔太 (https://www.amazon.co.jp/dp/B0C7R87F5G/ )

"渋やん" 渋谷毅

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渋谷さんの演奏はソロがベストで、デュオは許容というとストイックすぎるが、それくらい小編成での演奏が素晴らしいと個人的には思っている。
デュオ以上の編成となるとオーケストラ作を最近は聴いたくらいか。
ソロ作はこれまで6作リリースされていて、本作を除いてすべて聴いています。(しっかり買いました)
 "PIANO SOLO LIVE" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/498335391.html ) 2023
 "カーラ・ブレイが好き!!" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/491759541.html ) 2022
 "Famous **" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/480926544.html ) 2007
 "Afternoon" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/485983148.html ) 2002

本作は1982年の作品で、一番最初にリリースされたソロ作ということになります。
渋谷毅 (p)

演奏曲は、オリジナルが2曲(1,6)と、Duke Ellington, Thelonius Monk等を含むスタンダード多めの選曲。
1.ルナジリオ
2.オールド・フォークス
3.エストレリーター
4.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ
5.ソリチュード
6.タリラリ・ブルース
7.ボディ・アンド・ソウル
8.ミステリオーソ
9.ジプシー・ラブ・ソング

聴きながらつらつらと文字を書いていくと、
主旋律を奏でる右手が、しっかり饒舌、明るさのあるフレーズ、音数多め、主張のしっかりした演奏
伴奏を担う左手が、寡黙、溜めを効かせるような、やさしめのタッチ、重厚な音色
と、左右の手を別々にして、こんな語が並んだ。
この性格の異なる両手の絶妙なバランスが、渋谷サウンドを作り出しているということをあらためて認識したしたような感じ
過去のソロ作でここまで演奏を明瞭にこうだと思った記憶がなく、この作品が初期のもので渋谷さんもまだお若く
メリハリのある演奏をしているからではないかと推測。
この文章を公開する前に、近作を再度聴いてみたが、7曲めのBody & Soul が、本作と近作で演奏されていて比較するのに好適であるが、右手と左手の役割が歳とともに良い意味で曖昧になってきているような感じで、近作では柔らかく丸い演奏と感じられるが、こちらはメリハリがしっかりしていてダイナミックな演奏が楽しめるような印象。
演奏から年代の差を如実に感じられる。

ベストは6曲めでしょう

"渋やん" 渋谷毅 (https://www.amazon.co.jp/dp/B07Z743842/ )

"Pixel" Keigo Hirakawa

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平川恵悟は、オハイオ州デイトン在住のピアニストで工学博士という肩書の人だそう。
この盤も自分の琴線?アンテナには全然ひっかかってこず、教えてもらい聴かせてもらっています。
ちなみにこれが3枚めのリーダー作になるようです。

メンツはギター、サックス入りのクインテット。
メンツを自blogで確認してみましたが、Robert Hurst以外は聴いたことのない人でした。
Keigo Hirakawa(P)、Brandon Scott Coleman(G)、Robert Hurst(B)、Alex White(Ds)、Rafael Statin(Sax,Fl:5,Bcl:5,7)

演奏曲は7曲がKeigo Hirakawaのオリジナルで、Brandon Scott Colemanが1曲提供しているようです。
1. Pixel
2. Far Above
3. Home Somewhere
4. Origami Beetle
5. Unmarked Path
6. Yaw Pitch Roll
7. Dreaming Awake
8. Change of Plans

サックスとギターが絡むテーマを冒頭に持ってくる曲が多め。
そのサックスはテーマでは、王道的で気を衒わない振る舞いを見せるが、ソロになると粗めな音色を駆使した攻めたアドリブに変貌する。
リーダーであるKeigo Hirakawaのピアノは、かなり饒舌な右手で、ここでもベースとのコンビネーションが支配的。
フレーズは、美音流暢系を基本とするが、パルシブな音使い、スピリチュアルな音使いも効果的に入れ込んでくる。
さすがにリーダー、1曲めからかなり気合いの入った、これでもかと畳み掛けるようなソロを繰り広げる。
ギターは、バッキングでは要所でもリフで存在感を魅せる程度だが、ソロではロックな色合いが強めなアドリブを弾く人って印象だが、このサウンドはこのアルバムの音楽にうまく溶け込むようなもので好印象。
リズムは、ちゃんとベースとドラムといて両者とも終始音は出しているが、前述の通り、ドラムよりもベースの存在感に耳がいくような感じ。ドラムソロもあるのだが、さすがRobert Hurstといったところ。
メカニカルなテーマから8ビートのソロがいつの間にやら4ビートに変化する凝った曲があったり、全体に曲調としては、明瞭感のあるものがベースで、重い気分にならずに気持ちよく聴けるもの。

ベストは、8曲めにしましょう

"Pixel" Keigo Hirakawa (https://www.amazon.co.jp/dp/B0C37S6GBV/ )


"帰る方法3" 松本治/渋谷毅

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渋谷毅さんの一連のデュオ作のうちいくつかを以前集中的に聴かせてもらってました。
 "無銭優雅" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/498924754.html ) 津上研太
 "野百合" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/481735304.html ) 宮沢昭
 "蝶々在中" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/481276738.html ) 川端民生
 "BLUE BLACKの階段" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/488427408.html ) 松風鉱一
 "月の鳥" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/485869251.html ) 石渡明廣
 "しーそー" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/488427448.html ) 森山威男
たしか、渋谷毅オーケストラのメンバーとのデュオ作を作っていくというシリーズになっていたらしいですが、平田王子さんとのデュオとか助川太郎さんとのデュオとかそれ以外の作品も存在します。
 "Goodmans" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/498636615.html )

本作はトロンボーンの松本治さんとのデュオで、「渋谷毅オーケストラのメンバーとのデュオ作」シリーズの1枚ということになります。
松本治(Tb)、渋谷毅(P)

演奏曲は、松本さんのオリジナルが4曲に、Miles Davis, Duke Ellington, Tadd Dameron, Charlie
Parkerで全部で8曲。
1.AFTERNOON MELANCHOLIC WHEN WIND BLOWS
2.NO ONE SEES IT
3.BOPLICITY
4.COME SUNDAY
5.帰る方法3
6.イヌの生活
7.SOULTRANE
8.BLUES FOR ALICE

スローテンポのゆったりとした曲調が中心。
渋谷の左手で奏でられる低音のフレーズが、ゆったりとした雰囲気をより助長していくような伴奏となる。
右手は伴奏に加わるときはより控えめに、ソロでは饒舌にしっかりとした意志を感じさせるような演奏を聴かせる。
さらにそこに、松本のトロンボーンの力感のない音色での力感のあるフレーズ、情感たっぷりのサウンドが乗ってくる。
音数がまるっきり少ないというわけではないが、感覚的には実際以上に空間感をたっぷりと感じさせるサウンドは、渋谷毅のデュオ作で楽しめる独特な音空間だと思うが、本作でもそれはたっぷりと享受することができる。
良い味わいを醸し出していて、渋谷さんのピアノはやっぱり良いなぁとしみじみと感じた次第。

ベストは 2曲めにしましょう

"帰る方法3" 松本治/渋谷毅 (https://www.amazon.co.jp/dp/B001ACLNJE )

渋谷毅, 早川岳晴 デュオ (20230908)

20230908a


先週に引き続いてのライブ。
今回は、渋谷毅、早川岳晴のデュオで、3月にあった前回もこのデュオは見ています。
 (20230311) (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/498536044.html )

早川さんがこのライブの少し前に事故にあわれたとかで、渋谷さんのソロになることもあやぶまれましたが、アコベでなくエレベなら大丈夫ということで、そのままデュオでのライブになったようです。
たしかに、見た目には怪我をされているようには見えず、ちょっとびっこをひいているかなくらい。
実際には、体のあちこちが痛かったようですし、終演後足にサポーターを巻いていたので、まだまだ万全とはいえない状況だったようです(お大事にしてください)

18時開場直後にお店に着いたら、カウンターで渋谷さんは静かに譜面を眺めていました。
ピアノもベースもしっかりセッティング済みで、今回はもしかしたらリハーサルまで終わっていたかもしれない。
台風直撃の日だったので、もしかしたら早めにお店に入っていたのかもしれません。
舞台は、デュオ時の定番配置のピアノを左手前に移動したもので、ピアノの定位置ちょっと手前あたりに早川が座る。
定刻を5分ちょっとも過ぎたところで、両者舞台へと歩いてきて演奏開始。
とくにMCがあるわけでもなく、おもむろにピアノを弾き始める。

これまで、1曲終わると、長らく譜面を漁って次の曲を決めるような場面に何回か遭遇したが、今回はらほぼ譜面を漁る場面はなく、逆に譜面を見ないで演奏している場面が多かったくらい。
いくつかはあらかじめ決めてあった曲で、B♭のブルース、Amのブルースなんて言って始めた曲があったので、いくつかは即興での演奏だったよう。全然そんな感じでなく良い曲でした。
スローな曲と言いつつ出してきた譜面を見せつつ1〜2フレーズ弾くことで早川さんに曲のニュアンスを伝えて曲の演奏に入っていったり、といった感じで演奏を続けていく。
ひとしきりテーマからピアノ即興と演奏すると、渋谷さんが首を右に曲げて合図をすると、早川さんのソロになだれ込むような展開。
曲の進行はその場その場で決まっていくのはジャズの常套だとしても、さすがの名手二人の演奏、まったく破綻をみせず、それぞれの魅力を全開にしたような演奏を聴かせるのは感嘆しかない。
2ndセットの冒頭3曲がCarla Bley由来の曲を並べてきました。
お店の宣伝文句が、Carla Bley好きの渋谷さんに、エレベの早川さんはSteve Swallow化するなんて書かれてましたが、早川さんはしっかり終始早川さんでSteve Swallowの片鱗すら見せてなかったと思います。

演奏曲数は、1st Setが5曲くらいで50分弱くらい、2nd Setが6曲くらいでこちらも50分くらい。
すぐにアンコールに入って、今回は、Round About Mifnightでした。
あいかわらず、見事な渋谷ワールドをたっぷりと堪能させていただきました。

"ホームグランド・アケタ・ライブ" 渋谷毅オーケストラ

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渋谷毅オーケストラの作品は、過去に6作出ているようでその全貌は以下のとおり(wiki調べ)
 "LIVE 1989" (https://www.amazon.co.jp/dp/B07V3V1F91/ ) 1989
 "LIVE '91" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a63258781.html ) 1991
 "酔った猫が低い塀を高い塀と間違えて歩いているの図" (https://www.amazon.co.jp/dp/B001AQ9MFW/ ) 1993
 "TAMASA" (https://www.amazon.co.jp/dp/B001AQ9MG6/ ) 1997
 "ホームグランド・アケタ・ライヴ" (この紹介) 1999
 "ずっと西荻" (https://www.amazon.co.jp/dp/B001AQ9MGG/ ) 2003
渋谷オーケストラは、現在もメンツを変えてずっと継続されていますが、残念ながらライブでは未聴。
最近、初期(1991,1993)の2枚を合わせた2枚組での復刻がされたので、最近のメンバーでのアルバムリリースなんてのもあったらいいなと薄々期待したいところ。

メンツは、固定されているわけではないのでアルバム、ライブごとにいろいろと変化はしていそう。
すぐに調べられた3作(本作含む)と最近のライブのメンツを書いてみます。

1989
渋谷毅(P)、吉田哲治(Tp)、松風紘一(Bs)、武田和命(Ts)、松本治(Tb)、廣木光一(G)、石渡明廣(G)、川端民生(B)、古澤良治郎(Ds)
1991
渋谷毅(P)、林栄一(As)、臼庭潤(Ss)、松風鉱一(Sax)、峰厚介(Ts)、松本治(Tb)、石渡明廣(G)、川端民生(B)、古澤良治郎(Ds)
本作
渋谷毅(P)、松本治(Tb)、松風紘一(As)、津上研太(As)、峰厚介(Ts)、石渡明広(G)、川端民生(B)、古澤良治郎(Ds)
最近
渋谷毅(P)、林栄一(As)、津上研太(As)、峰厚介(Ts)、吉田隆一(Bs)、松本治(Tb)、石渡明廣(G)、上村勝正(B)、外山明(Ds)

武田, 松風, 川端, 古澤の4氏が鬼籍に入り、松本治、石渡明廣がずっと残っていることはわかると思います。

演奏曲は以下のとおり。
01 GREAT TYPE
02 BALLAD
03 STRANGE WOOD BLUES
04 WALTZ FOR AKETA
05 WHAT MASA IS-SHE IS OUT TO LUNCH
06 CHA RA RA
07 SOON I WILL DONE WITH THE TROUBLES OF THIS WORLD
08 LOTUS BLOSSOM

良い意味での緩い感じ、曲の勢い、多くの場面でのソロのテンション、とか、渋さ知らズを筆頭に、多くの邦人ビッグバンドに近い雰囲気を感じるのは中央線ジャズのDNAもあるんじゃないかと推察。
古澤の乾いた音色のパワフルなドラム、川端のゴリッとしながらエモーショナルなベースがよく利いている。
この両者は生で聴くことが叶わなかった。ちょっと悔やまれると感じるくらい。
さすがにここでは主役がピアノということで、イントロ、ソロとかでのピアノの露出頻度が高く印象的に聴かせるアレンジが施されている。
サウンドバランス的にも、他の邦人ビッグバンドのいろんなアルバム以上にピアノがしっかり聴き取れるようなバランスになっている。
実際には、ピアノだけでなく数曲でオルガンを弾いていて、アグレッシブな曲でその比率が高い印象
さらに、石渡の泣きのギターが良い味を出していて、バンドの全体的なイメージとしても、この石渡のギターサウンドが占める割合は相当高いと思う。
とくに7曲め後半のソロとか素晴らしい。
全体として、とくに美麗に聴かせるべきパートでのていねいなアンサンブル、端正な響きとかが見事で、この辺は渋谷オーケストラの真骨頂といっても良いんでしょう。

ベストは 2曲めにします

"ホームグランド・アケタ・ライブ" 渋谷毅オーケストラ (https://www.amazon.co.jp/dp/B00005EU12/ )

石田幹雄, 須川崇志 デュオ (20230901)

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この両者のデュオは、2019年から演っていて、その最初に立て続けに2回聴いています。
 (20190330) (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a64770896.html )
 (20190807) (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/468674735.html )
その後は、もっと頻繁に聴きたかったのだが、なんだかタイミングが合わず3年以上空いてしまいました。この間もコンスタントにこの2人でのライブは演ってたのですが。。
久々に参戦したのが今年3月で、これに続いて今回も参戦してきました。
 (20230304) (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/498436359.html )
多忙な方々なので両者のスケジュールが合う日を探ると数か月後ということになってしまいます。

18時の開店早々にお店に赴いたのですが、まだまだリハーサルを始めたところで、各曲のテーマを合わせつつ、音の響きやすいピアノ配置、ベースの位置を決めてました。
ステージは、デュオ時の定番配置のピアノを左手前に移動したもので今回はほぼ横向きの配置、ピアノの定位置ちょっと内側あたりに須川が立つ。

定刻の19時を5分も過ぎたところから演奏開始。
両セットとも石田のオリジナルが多めの選曲で、ミディアムテンポくらいの少しスピリチュアルな気配を感じさせるものが多かったか。
今回の石田は前回にも増して、ストイックにピアノに対峙しているような印象で、体の捩りも控えめ、終始小さく唸り声を発しながらの演奏。
なんというか、命を削って音に込めているような印象を持ってしまったが、その削られた命を掬い取るような須川のベース。

とくに1st setの2曲め後半、3曲めから4曲めにかけてがもの凄くて、坦々と畳みかけてくるような演奏なんだが、徐々に聴く側の感情を揺さぶってくるような感じになってきて、4曲めが美旋律系バラードで、その美しさがきわまったところで、徐に須川が弓を取り出し美しいボウイングで畳みかけてくる、この展開がこれまた感極まってくるようなもので....(感涙)
終了後、凄い凄いと騒いでいたら、こんな感激してたのは自分だけだったみたいだが..

1st setが40分くらい、2nd setが50分くらいにアンコールにも応えてくれ、お客さんはあまり多くなかったがこの両者の演奏はなんだかんだやっぱりとんでもない!
次回は12/22に決まっていたと思う。

"Our Waning Love" 謝明諺&スガダイロー

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先ごろ(2023年6月)来日して、多くのミュージシャンと共演していた謝明諺が、A New Little Oneと共演したアルバムが出ました。
来日時のライブ告知をさらってみると以下のような錚々たる面々とセッションをしていました。
 スガダイロー、細井徳太郎、秋元修
 田中真理、坂本健志、吉峯勇二郎
 永武幹子、高橋陸、類家心平、池沢龍作
 林栄一
 市野元彦、津上研太、外山明、
この先頭に記載されているのが、A New Little Oneで、たぶんこの盤のリリースにあわせての来日だと思うが、この面々で3回(名古屋、水戸、新宿)ライブを行ったよう。
そのA New Little Oneの近作は先日聴いていて紹介しています。
 "2022" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/499897855.html )

謝明諺(シェ・ミンイェン)は台湾のフリージャズ系のサックス奏者とのことですが、この盤を知ったのと上述の来日情報で名前を知った人。
それ以上の情報はインタビュー(https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/34816?page=3 )を読んでみてください。
スガダイローのアルバムはできるだけ聴きたいというところで購入に及んでいるため、購入時点で謝明諺がどんな演奏をするかは知りませんでした。

メンツは上述のとおり、A New Little Oneの3人に謝明諺が入ったカルテット。
謝明諺(Ss:2,4,6、Ts:1,3,5,7)、スガダイロー(P)、細井徳太郎(G)、秋元 修(Ds)

演奏曲は、6曲目を除いて謝明諺のオリジナル。6曲めはスガダイロー作。
1. Our Waning Love 06:44
2. Tide 08:50
3. Switch It 07:50
4. Chamakana 09:41
5. Ann 07:48
6. A Little Rag...For You 03:36
7. This Thing 09:46

謝明諺のサックスは、最初の印象が音色が綺麗で綺麗な演奏をする人だなぁというもの。
もっとも、冒頭こそ端正なテーマを端正に演奏しているが、曲が進んでくるとテーマからその後の即興とかまでなかなかエグいフレーズをかましてきていて侮れない。
そんなサックスを迎え撃つスガのピアノは、美麗フレーズからフリーまで、五月雨連打な演奏も駆使したダイロー特有のフレーをたっぷりと縦横無尽に繰り出す実に見事なもの。
とはいえ、なんだかんだで一番強烈なのは細井のギターで、たぶん前作のトリオ以上にここでの細井のギターのはっちゃけ具合は特段の破壊力を持っている。
5曲めでスローで内省的な曲で美しいけど重めの曲で、がらっと雰囲気を変えてくる。
さらに続く6曲めが、打って変わってのタイトルの通りラグタイムな曲で、こちらは一気に明度が上がる。
そんな曲展開の乱高下もかなり驚かされる。

ベストは4曲め

"Our Waning Love" 謝明諺&スガダイロー (https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5S1J1QC/ )


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